でも、私は、
あなた方とは違う世界を見ています。
そこで目にするものに恐怖を感じています。
敵の実態を知ることが出来ないからです。
地図上に存在せず、
国家でもない、
個人なのです。
周りの誰がそうなのか?
顔や制服や国旗は見えません。
かつて見通せた世界が不透明になってしまった。
影の中なのです。
その中で戦うしかない。
我々が無用だという前に、
考えてみてください。
今がどれだけ安全か
ダニエル・クレイグ演じるボンド3作目であり、シリーズ23作品目、ボンド2-3、そしてシリーズ50周年でもあります。
本作品「スカイフォール」は、前作と違って評論家も、ファンもほとんどの人が大絶賛、確かに!と頷ける部分もあるし、なんだかなぁ・・・という部分も混在していて、個人的には本当に複雑な心境です。
悪役は、さすがの存在感のハビエル・バルデム。
元MI6の凄腕エージェントだったという設定で、手の内を全て読まれている感じは、すごくよかったです。

そして、毎回話題になるボンド・ガールですが、「スカイフォール」でメインのガールはジュディ・デンチ演じるMです。

最終的にはQも、マネーペニーも復活して、古き良き時代をほうふつとさせる状況でエンドロールを迎えるのですが、それだからこそ、次回作が心配でたまらないという心境になります。


「スカイフォール」のストーリー:
いわゆる、発信機だ
MI6のエージェント、007=ジェームズ・ボンドは新人女性エージェントのイヴとともにトルコでの作戦に参加していた。
その最中、MI6の工作員が殺され、各国のテロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められたハードディスクが奪われた。
ボンドはディスクを取り戻すべく、実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追跡する。
MI6部長・Mの指令により、ボンドと列車の上で格闘しているパトリスを狙ってイヴが撃った銃弾はボンドに当たり、ボンドは峡谷に落下し行方不明となる。
数カ月後。
ボンドは公式に死亡が認定され、Mは情報漏洩の責任を問われ情報国防委員会の新委員長であるギャレス・マロリーから引退を勧められる。
それは事実上の更迭勧告だった。
その提案を拒絶するMだったが、その直後にMのコンピュータが何者かによってハックされる。
さらにMI6本部も爆破され、多くの職員が犠牲となった。
このニュースは僻地で秘かに過ごしていたボンドも目にするところとなり、ボンドはロンドンに戻る。
00(ダブルオー)要員への復帰テストに臨むボンドだったが、成績は惨憺たるものであった。
復帰に懐疑的なマロリーの意見を一蹴し、Mはボンドの職務復帰を承認する。
ボンドは自身の肩に残っていた弾丸の破片からパトリスを特定し、新任の兵器開発課長・Qから装備を受け取ってパトリスの向かう上海へ赴く。
上海でボンドは格闘の末にパトリスを倒したものの、雇い主が誰なのかを聞き出す事に失敗。
パトリスの所持品にあったカジノのチップを手掛かりにボンドはマカオへ向かう。
その頃、ハードディスクにあった5人のNATO工作員の名前がインターネット上に公表され、毎週さらに名前を公表していくという予告がなされる。
カジノでボンドはパトリスの仲間らしい謎の女性・セヴリンに接触。
何かに脅える様子のセヴリンにボンドは、雇い主を殺すつもりがあるなら手伝うと持ちかける。
セヴリンを監視する襲撃者たちを撃退したボンドはセヴリンの船で共に雇い主のいる廃墟の島に向かうが、船上でセヴリンともども囚われの身となる。
島ではパトリスとセヴリンの雇い主、ラウル・シルヴァと対面する。
シルヴァは自らとボンドを「共食いの果てに最後に残った2匹のネズミ」に例える。
元MI6エージェントであったシルヴァは、香港支局勤務時に中国当局に捕らわれ見捨てられたことで、当時の上司Mを深く恨んでいた。
そしてこの島にサイバー犯罪の拠点を作り上げ暗躍していたのだった。
シルヴァはボンドが心身共に現場復帰に適さない状態にありながらMがそれを隠していたことを告げる。
だがボンドは「私の趣味は『復活』だ」とそれを一笑に臥す。
シルヴァはセヴリンを危険に晒した射撃ゲームでボンドを試そうとする。
結果セブリンはシルヴァに殺されるが、ボンドは一瞬の隙を突きボディガードたちを倒し、シルヴァを捕らえることに成功するのだが・・・

↓ここからは重大なネタバレも含みますので、作品を観終わった後に読まれることをお勧めします。
「スカイフォール」のサイドストーリー:
きっと気が合うと思うよ
007シリーズには、特に思うことなんですが、この脚本が途中で色々なところから手が入って二転三転したんだろうな〜的な辻褄の合わなさ。
「スカイフォール」でも、如実に感じました。
このアイデアも使いたい!
こういう伏線も張りたい!
そういうアイデアの断片がたくさんあって、それをどうひとつの物語に組み込んでいくか・・・そういう作り込み方に見えてしまって・・・。

例えば、今回の悪役シルヴァは元Mの部下で、捕虜になって拷問の末奥歯に仕込んだ青酸カリで自殺を試みたものの死ねず、その成分のシアン水素の影響で上歯の大多数と左の頬骨を失って醜い姿となり、Mへの復讐心を燃やしているという設定なのです。
そしてMの部下だった、ということは元00課のエージェントだったという設定になりますよね。
シルヴァが英国の諜報部員として活動していた期間は、'86〜'97年。
ちょうど、シリーズでいえばロジャー・ムーアからティモシー・ダルトンにボンドのバトンが渡されて、更にピアース・ブロスナンがボンドを引き継いでいた時期と重なります。
なんだかね、過去のボンドの(性格やらなんやらの)設定が良かったなんていうファンに向けてのオールドボンドの亡霊とダニエルボンドの対決的な感じに受け取れなくもないという・・・
お前らガタガタ言うんじゃねえよ!ボンドはこれで行くんだよ!的な、ね。
これは・・・最初のプロットにボンドが007に就任する前の007のコードナンバーを持つ00セクションの諜報部員だったなんてアイデアもあったんじゃないの?って勘繰りたくもなります。
もちろん、そんなことはしないでしょうけどね。
更に勘繰れば、「007/ダイ・アナザー・デイ」の冒頭でボンドはアジア某国に捕虜として囚われ拷問を受けます。
いわばシルヴァに成りかねない状況だった。
そして、今回マーガレット(M)からMを引き継いだギャレット・マロリー捕虜になって拷問を受けた経験あり。
しかも、マロリーは陸軍中佐で、ボンドは海軍中佐。
つまり、まかり間違ったらボンドがこうなっていたかもしれないよという敵と、もしもボンドがボンドの上司になったら的な感じにも受け取れて、とても興味深かったです。
シリーズ中、時々以前の作品をなかったことにしてきたシリーズですが、今回は、もしかしてクレイグボンド前二作品をなかったことにしたの?
そう思えるシーンがいくつかありました。

例えば、ボンドがMを連れてスカイフォールまで逃げる途中で、公用車からボンドの使用者に乗り換えるシーンですが、このアストンマーチンDB5って、ナンバーもハンドルも違うので「007/カジノ・ロワイヤル」の時にアレックス・ディミトリオスから賭けで奪ったものではなくて、「007/ゴールデンアイ」の時のブロスナンボンドが所有していたQ課からの払い下げの元政府所有車だったようです。


ナンバーも一桁違いで、「007/ゴールドフィンガー」でコネリーボンドが乗っていたQに返却できなかったはずのアストンマーチンと同じナンバーのDB5なんですよね〜。

いや、Qセクションからの払い下げだったとしても、実弾仕込んで発砲できちゃ駄目でしょって思いますけどね。

これまでもそれとなく匂わせていたBLっぽさが、今回は発露しそうになっていましたね。

また、今回待ちに待ったQとマネーペニーがやっとこさ登場しますが、個人的には、悲しいです。
確かにMI6を危機に陥れてしまいますが、シルヴァのPCをつないで調べろと命じたのはMですし、敵の仕掛けたパスを入力するよう指示したのもボンドですから。
でもね、「グラン・ボロー・・・グラン・ボロー・ロードは古い地下鉄の駅の名前だ!これをパスワードに使え」とボンドが言ったのを観た時、たぶん全世界の人が「あかん、そりゃあかんで〜!」って心の中で叫んだはず。
Qも、そこまで大口叩くなら気付いてよ〜って思いますよね。

でも、Qはまだいい、許せます。
マネーペニーは、これ。
ボンドとマネーペニーの関係は、あの触れそうで触れないみたいな距離感が良かったのだと思うのですが、今回なまじボンドガール的なニュアンスで登場させたもんだから、扱いに困ってヒゲを剃らせたり、その後のカジノで一線を越えた会話をさせておきながら、キスのひとつもさせないという、何とも不思議な消化不良の思わせぶりなまま放っとかれた感じになっちゃいましたね。

あと、キンケイド。
サー・ショーン・コネリーに打診したらしいのですが、もし実現していたら、完全にクレイグボンドが喰われてしまっていたと思いますよ。

それはね、役者としての格がどうとか、レベルがどうとかの問題じゃなくて、例えば目の前で銃を発砲されたり、爆発が起こった室内に居たりしたら、クレイグボンドだと普通に被弾したりしそうですが、コネリーだと何か危機一発助かりそうでしょ?
なんかそういう持っている雰囲気が違うんですよね〜。
その雰囲気が007というフィールドだとコネリーを際立たせてしまう的ナ感じです。
あと、すごく気になるのは、クレイグボンドの老いを強調するところ。
「身体が利かない割にはやるじゃないか!」とか「膝に来るだろう?」とか「若者の仕事だ」とか。

・・・とはいえ、50周年記念ということもあり、これまで以上にシリーズに対するオマージュシーンが満載で、本編だけじゃなく、そこも楽しみたかった、でもイマイチ乗り切れなかったのは、このシーン・・・

カフスを直すしぐさは、(水中でもタイを直す)古き良きボンドの姿なのですが、そこが逆にオマージュではなくパロディに感じてしまって・・・だって、考えてもみて下さい。

クレイグボンドって、できれば正装したくない、隙さえあればジャケット脱ぎたい、ネクタイ外したいってボンドだったのに、突然こういうオマージュシーンを入れられると、ねえ。

楽しめた嬉しいオマージュシーンも、たくさんありました。

これは「007/ダイヤモンドは永遠に」ですね。

これと・・・

これとか

これと

これとか

これと

これとかね♪
さて、劇中流れる音楽で印象的な「ぶーん♪ぶーん♪」という曲。
軍艦島で・・・
スカイフォール襲撃時ヘリから・・・
あと、サントラはこちら


Grand Bazaar, Istanbul (05:14)
Voluntary Retirement (02:22)
New Digs (02:32)
Severine (01:18)
Brave New World (01:50)
Shanghai Drive (01:26)
Jellyfish (03:22)
Silhouette (00:56)
Modigliani (01:04)
Day Wasted (01:31)
Quartermaster (04:58)
Someone Usually Dies (02:29)
Komodo Dragon (03:20
The Bloody Shot (04:46)
Enjoying Death (01:13)
The Chimera (01:58)
Close Shave (01:32)
Health & Safety (01:29)
Granborough Road (02:32)
Tennyson (02:14)
Enquiry (02:49)
Breadcrumbs (02:02)
Skyfall (02:32)
Kill Them First (02:22)
Welcome to Scotland (03:21)
She's Mine (03:53)
The Moors (02:39)
Deep Water (05:11)
Mother (01:48)
Adrenaline (02:18)

さて、以前から「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」以降のボンドシリーズは、段々ボンドガールのドラマや生き様重視になってきて、ボンドはそこに花を添える狂言回しの役割になっていると指摘してきましたが、今回もその傾向は顕著に現れていますね。

本作品でボンドは、ママ(M)からの巣立ちの儀式を終え、エンディングで本来の居場所に戻り、若いQ,ミス・マネーペニーも復活、Mも収まりのいいオフィスを構え、任務が下るシーンの後、恒例のガンバレル・シーンが描かれます。
つまりこれまでの長い序章を終え、やっとこれからシリーズ本編が幕を開ける。
そういうシーンが描かれるわけですが、そうなると、今回人格も性格もバタバタと入れ替わり、色々と模索を続けているクレイグボンドが、どんな007に成熟しているのか、次回作「007/スペクター」が非常に待ち遠しい。
明日観に行きますけどね♪
っていうか、もう今日ですね。