2016年05月04日

みどりの日に思う





雑草という草はないんですよ。



どの草にも名前はあるんです。



どの植物にも名前があって、

それぞれ自分の好きな場所を選んで生を営んでいるんです。



人間の一方的な考えで、

これを切って掃除してはいけませんよ



【入江相政「宮中侍従物語」より昭和天皇の御言葉】





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昭和の時代は、もともとゴールデンウィーク(GW)の4月29日が昭和天皇誕生日だったのですが、昭和64年1月7日に昭和天皇が崩御され、今上天皇が即位されたことを受け、「天皇誕生日」も今上天皇の誕生日に合わせて新しく12月23日に制定されたので、4月29日は一旦「みどりの日」と制定されました。

しかし、その後あらためて4月29日が「昭和の日」に定められ、それに伴ってもともと「国民の休日」であった5月4日が格上げされたという経緯があります。

もともと5月4日には、特に国を挙げて祝う理由や起源は持たず、連休を大型化する狙いで設けられた祝日でした。




「みどりの日」自体の名称の由来は、各界識者をメンバーとする小渕恵三官房長官(当時)の私的諮問機関(皇位継承に伴う国民の祝日に関する法律改正に関する懇談会)において、「昭和天皇は植物に造詣が深く、自然をこよなく愛したことから『緑』にちなんだ名がふさわしい」という主旨の意見が多数を占めたから・・・だ、そうです。




日本の季節や自然を愛した昭和天皇は、特に海洋生物と植物の研究に、熱心に取り組まれて、「その気になれば学位を取れる」として評されるほどでした。

海洋生物の研究にに関しては、ヒドロ虫(ヒドロゾア)の研究論文をご自身で著されたり、30種以上のヒドロ虫類の新種を発見され、海外でもこれらは「HIROHITO」名義で発表されています。


植物の研究に関しては、皇居、那須、伊豆など、ご自身に関わり深い場所の植物について調査研究されました。

これは四季折々の日本の美しい自然の秩序の中で神武天皇以来、森羅万象を畏れ崇め奉ってきた日本人の総意を受けて総括し、シャーマンとして祈り続けてきた歴代の天皇の一人として、歴代天皇との和衷協同の意識を持って研究に取り組まれたのではないかと拝察しております。



さて、当記事冒頭の言葉ですが、これは昭和天皇のお人柄をとてもよく表した御言葉だということで、よく上げられる言葉ですが、いつも言葉だけが独り歩きしているように感じられます。

その独り歩きを受けて、この言葉に違和感や不快感を覚える方々がいらっしゃるようです。

例えば・・・雑草以外にも「雑」のつく言葉は、「雑費」「雑誌」「雑用」「雑貨」「雑談」「雑学」「雑務」など、挙げればキリが無いほどたくさんあるのですが、これらはどれも「普通名詞」で、特定のものを表す「固有名詞」ではないことから、昭和天皇が雑草を誤って「固有名詞」として認識している、つまり昭和天皇の不明から来たエピソードだ、という意見。


例えば、植物を育てたり、庭を持っている人なら頷くところでしょうが、何を雑草と見るかは、その人次第で園芸植物と見る人もいれば、同じ植物をして雑草と見て、即座に抜く人もいる。

いずれにせよ、雑草が多く繁殖しすぎると、本来育てたいと思っていた植物が充分に育たなくなるので、バランスを取る為に雑草を見つけると即座に抜くという経験は、庭を持つ人、植物を育てている人なら、皆理解できることで、その証拠に雑草を駆除する為の除草剤なるものが、ホームセンターに行けば、山ほど売っている。

そういう現実を知らず、庭を手入れした侍従たちを叱るとは、お気楽で、庭を管理する者(侍従たち)の苦労も心遣いも察せず、実際を知らない不明な人物だからできることだ、という意見。



そこだけを見ると、各々ごもっともな意見ですが、これが、いつ、どのような時のお言葉なのかを知ることで、もっと昭和天皇のお心が知れるのではないでしょうか?







この言葉は・・・

「宮中侍従物語」によると・・・

ある戦後すぐの夏のこと、昭和天皇皇后、両陛下が夏休みのために那須の御用邸か下田にいらっしゃって、秋口にお帰りになる予定あり、このとき侍従たちは、お帰りになって草がたくさん茂っていたらお見苦しいだろうと、天皇が住まわれていた御座所の庭(広芝というのだそうです)の草を刈ることにしたそうです。

しかし戦争直後のことでもあって草を刈る人手が足りず、一部草が残ってしまっていた為、昭和天皇がお帰りになった時に、入江さんが「真に恐れ入りますが、雑草が生い茂っておりまして随分手を尽くしたのですがこれだけ残ってしまいました。いずれきれいに致しますから」とお詫びをしたそうです。

すると昭和天皇は、いつもは侍従たちにも穏やかに接しておられるのに、この時はいつになくきつい口調で、「何を言っているんですか。雑草という草はないんですよ。どの草にも名前はあるんです。どの植物にも名前があって、それぞれ自分の好きな場所を選んで生を営んでいるんです。人間の一方的な考えで、これを切って掃除してはいけませんよ」とおっしゃったというのです。

どんな草にも名前や役割はあり、人間の都合で邪険に扱うような呼び方をすべきではない、ということをおっしゃりたかったようで、これを聞いた入江氏にはこの言葉が強烈な印象として残り、昭和天皇と過ごされたことを書いた「宮中侍従物語」にもぜひこれを書きとめておきたいと思ったようです。



このエピソードが終戦直後というところが、ポイントになると思います。

戦争というのは、言うまでもないことですが、相手国からの一方的な都合や理屈で相手国のすべては悪と決め付けられて蹂躙される。

これは、広島長崎の原爆投下だけでなく、東京大空襲をはじめとして、日本全土で一般の日本国民が巻き込まれたジェノサイドを経験して、まだ間が無い時期のこと。

ですから、どちらかというと、「雑草」云々より、「いずれ、きれいに致しますから・・・」という文言に対する思いだと受け取れます。



どうでしょうか?



昭和天皇の、この思わずほとばしり出たような「雑草」についてのお言葉に込められた、お心の内が拝察できようというものです。

その上でも、揚げ足を取るような人格の批判や、文法的分類の間違いを指摘する気になれますでしょうか?





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せっかくなので、もうひとつ昭和天皇のお人柄が偲ばれるエピソードを・・・

出先の畑などで草花を採集する時は、それが雑草であっても、「畑の持ち主にきちんと断ってからにしなさい」と、侍従に諭してあったそうです。

いかがでしょうか?
posted by 大塚陽一 at 16:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本スイッチ
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