心遣はずと句に成るもの、
自賛にたらず。
(心を遣わないで句となったものは自慢するほどの句ではない)
【松尾芭蕉】
講師にも色々なスタイルがあって、講師によっては生徒さんとの関係をより円滑にするために・・・という目的からニックネームで呼んだり、ワザと友達言葉を使ったりする講師も居ますが、私はどんなに仲良くなっても生徒さんの前、というより学校の中では常に敬語を使うようにしています。
そういう私の講師スタイルについて「堅過ぎる」とよく言われますがそれには理由があって、授業に割り振られたマナーの時間は少なすぎて就業経験の浅い人にはまったく足りません。
その中でも敬語や謙譲語などは特に覚えないと使いこなせないものですから、あれだけの時間で充分に身につくわけないのです。
そこで、生徒さんが言葉遣いに困った時、私の言葉遣いを思い出していただければ、自然にその場にあった敬語や謙譲語を発見するきっかけになればと考えてのことなのです。
だから受講期間中はどんなに仲良くなってもタメ口やニックネームは使わないのです。
さて、前置きはこのくらいにして、今回は「言葉遣い」についてですね。
「言葉遣い」・・・どうして「言葉使い」でなく「言葉遣い」なのでしょうね。
この「遣」という言葉、辞書を引くと、『一部を割いて差し向ける。使いをやる。「遣唐使/差遣・先遣・派遣・分遣」』とあります。
「遣唐使」や「遣隋使」というのは天皇の言葉を間違いなく相手の天子に届けるのが役目でしたね。
これがいい加減に伝わったり、天皇のお心そのままに伝わらなかったら、大変なことです。
ですから、「遣」という言葉が使われているということはそれだけ大切で重要なことだという証拠だと思います。
外国人同士ならともかく、同じ言語を使う日本人同士なら、そんなに神経を使わなくても・・・とおっしゃる方もいらっしゃいます。
そうでしょうか?
私たちはよく、「ちょっと」という言葉を使います。
この「ちょっと」。
たとえば、「ちょっと待っててね」とあなたが言ったとします。
あなたにとって「ちょっと待って」の「ちょっと」というのは具体的にいうと、何分でしょうか?いや、何秒かも、何時間かもしれませんね。
あなたにとっての「ちょっと」が、たとえば五分で、あなたが待たせている人の「ちょっと」が一分だったとして、あなたは当初思っていたより早い三分後に出てこれたとします。
そんなに待たせず良かったな〜と思っているのに、相手に「遅い!」と言われたらカチンと来ますよね。
前もって「ちょっと待って」とちゃんと行っておいたし、「ちょっと」よりも結構早く待たせずに済んだのに、イライラをぶつけられて我儘なやつだなあとカチンとくるわけです。
一方相手にしてみれば、一分以上待たされたのに、謝りもしないあなたの態度に「遅い!」とつい言ってしまったのです。
実は、現実に私たちの周りでこういうことは頻繁に起こっています。
自分の尺度と相手の尺度が、同じ言語を利用している同士の同じ言葉についての解釈も違えてしまうのです。
ですから、本当は普段われわれがビジネス以外のプライベートで話をする時も自分の尺度を考えるだけで「言葉を使う」のではなく、相手にちゃんと自分が伝えたいことが伝えたいように伝わるように「言葉を遣わ」ないといけないのですね。
このことが理解できて「敬語」や「謙譲語」などの「言葉遣い」をするのと、そうでないのとでは雲泥の差が出てくるのです。
さあ、では次回の具体的な「言葉遣い」の応用編に続きます。
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