「崖の途中で草にしがみつき、
何とか上へ登ろうと
もがき苦しんでいたが、
思い切って両手を離すと、
何のことはない草地に軟着陸し、
そこには新しい世界がひろがっていた」
と答えた人があって、
感心させれた
【河合隼雄】
私自身が仕事で、心理カウンセリングやキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティング、人事コンサルティング、接客サービス・店舗コンサルティングなどを行っている中で、よく感じるのが、クライアントの認識の中でコンサルティングとカウンセリングの違いが不明瞭、或いは混同しているケースが多く、その認識の乖離によって、うまく結果に結びつかないということがあるので、ここで一度コンサルティングとカウンセリングの違いを明確にしておきたいと思います。
まず、「コンサルティング」とは語義的には「相談に乗ること」で、対企業のコンサルティングであれば、「業務における問題の発見・解決策の提案・業務の改善の補助、経営戦略への提言などを」することとなるでしょう。
対個人のコンサルティングであれば、それこそ語義の通り「クライアントの抱えている問題や悩みに対して、それを解消解決するための提案・提言などを」することとなります。
ですから、「コンサルティング」は、簡単に言うと対企業であっても対個人であっても、クライアントに対して相談に乗って、クライアントの抱える問題や悩みを改善、或いは解決できるいいアドバイスを行うというのが目的になります。
次に「カウンセリング」の大きな目的は、クライアント自身が自分の混乱(頭の中の混乱、および情緒的な混乱)を静め、整理整頓することをサポートしたり、孤独感を解消することなどです。
そのために、カウンセラーは、クライアントの話にひたすら耳を傾けます。
クライアントは、カウンセラーに話を聞いてもらえた、カウンセラーに理解してもらえた、という経験を通して、冷静に客観的に自己を見つめられるようになり、回復の道や自ら望む改善の道を歩んでいくようになります。
一方コンサルティングでは、コンサルタントは、クライアントに対し、コンサルタント自らの知識・方法を、教え伝えることがメインになります。
と、言うことは、コンサルティングにおいてクライアントは、自分が何をどうしたいのか、自分自身で理解できている必要があります。
何をどうしたいのかが、分からないほど混乱している場合や、人のアドバイスを聞き入れる余裕がない人にとっては、コンサルティングは無力です。
何をどうしたいのか分からないというのは、何をどうしたらいいか分からないという意味ではありません。
何をどうしたいのか分からないというのは、自分自身の欲求がわからないという状態ですが、何をどうしたらいいか分からないというのは、方法がわからないという意味です。
ですから、コンサルティングの初期段階においてカウンセリングを行ってからコンサルティングに移行するケースもありますが、クライアントの満足できる効果が出るまで時間がかかり、なかなか難しい面があります。
最初から時間や回数、コミュニケーションのチャンネルが限られているコンサルティング(電話相談やメール相談など)では、十分にカウンセリングできるものではないので、時には、そのまま電話やメールなどを使ったコンサルを続けるよりも、病院に行くことをお勧めする場合や、切り替えて、面談によるカウンセリングをお勧めする場合があります。
少しコンサルティングとカウンセリングの違いについて、例をあげてご説明します。
私は、経営に悩む経営者のカウンセリングをすることはできますが、経営のコンサルティングはできません。
私は、クライアントが私より頭がよくても、私より年齢が高くてもも、私より社会的地位が高くても、女性でも子どもでも、自信を持ってカウンセリングをすることができます。
それは、相手の年齢や性別、社会的地位に関係なく、それが悩み苦しむ人であれば、その気持ちをしっかり受け止めたり、理解しようと努めることができるからです。
しかし、これがコンサルティングであれば、私より知識のない人にしかすることができません。
私は、人事や接客サービス、店舗戦略といった分野に限って言えば、専門的な知識も実務経験もあるので、コンサルティングができますが、企業全体の経営で言えば、財務であれば、公認会計士や税理士、法務であれば、弁護士に比べ、圧倒的に知識がありませんし、業務の効率化に活かせるシステム開発の技術もありません。
ですから、具体的な(私の専門外の)経営に関する改善策や解決案を求められても、正確なアドバイスをすることができず、私の知人の公認会計士や税理士、社会保険労務士や弁護士といった、その道の専門家を紹介するしかないということになるでしょう。
私が、経営に対するコンサルティングができないと言う理由は、そういった意味です。
コンサルティングは、求める知識のない人がそれを知っている専門家から得るためのものです。
以前、手続きのための弁護士に行く前に、私のカウンセリングを受けに来たクライアントがいました。
法的な問題だったのですが、私の所でカウンセリングを受け、本当は自分自身が何をどうしたいのか、自分の求めるところを自分なりにちゃんと明確化してから、弁護士に相談しようと思ったのだそうです。
そのクライアントは、私の所で情緒的な問題を解決してから弁護士の所に行ったため、無駄なお金(弁護士費用)や無駄な時間を使うこともなく、非常にスムーズに事が進んだようです。
このクライアントは、カウンセリングというものをよく理解されていて、カウンセラーを非常に上手に利用した方ですね。
コンサルティングは対症療法的なもので、カウンセリングは根本解決を目指すもの、と定義付ける方もいらっしゃるそうです。
あなたも、コンサルティングとカウンセリングの違いをよく理解して、上手にコンサルタントやとカウンセラーを利用していただけたら、と思います。
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